前理事長の挨拶(2013〜22年度)

日本マインドフルネス学会は、欧米でマインドフルネス瞑想が注目される以前から、瞑想の効果に注目し、瞑想実践や研究を行ってきた心理学・精神医学・宗教領域の専門家を中心に設立されました。

マインドフルネス瞑想は、1回の実践による一時的なストレス軽減やリラックスという状態レベルの効果だけでなく、むしろ継続的な実践による特性レベルの効果が注目されているものです。効果を最大限に引き出すために、どのような手続き・組み合わせによるマインドフルネス実践の継続がより効果的か、実践を継続するためのモティベーションをどのように維持するかなど、科学的エビデンスが求められている多くの課題があります。またマインドフルネス実践のプログラムは実践者が生活する社会に適したものであることが求められ、また、効果に関するエビデンスは実践者が生活する社会で得られたものであることが重要です。これらの課題に答えていくためには、我が国においてもこの領域に関心のある研究者や実践家がネットワークを作り、お互いの知見を交換し合い、議論・検討する場が必要です。本学会は、そのような場として機能するために設立されました。

ストレス社会といわれる現代社会におけるマインドフルネスは、現時点ではストレス対処法としてのマインドフルネスといえるかもしれません。ストレスとうまく付き合うために、マインドフルネスという新しい引き出しを増やすことは役立ちます。しかしまた、無我や空の思想の伝統を有し、3.11を経験した我が国におけるマインドフルネスは、ストレス対処法としての個人主義的なマインドフルネスを超えて、縁起と絆を根幹に据えた共生のマインドフルネスを目指したい、さらには共生のマインドフルネスを発信していきたいという思いがあります。

多くの方に本学会にご参加いただき、科学実証主義/エビデンスベースドの枠組みの中で力を合わせ、ご一緒に日本社会と文化を背景にした介入プログラムの開発・工夫・実証そして発信を目指して活動し、この領域の発展に寄与していきたいと存じます。

越川 房子
(理事長任期:2013年9月〜2023年3月)